北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
仕事の終わりが見えたことで、凛乃なりに手持ちのカードを検討したのかもしれない。たしかに、家が借りられないなら買うという手がある。ここなら売主に直接交渉もできる。
支払い能力なんて、どうでもいい。欲しいなら売ってかまわない。どのみち累が凛乃の命綱を握っている現状を脱しないと、差し引きなしで想いを伝えることもできない。
でも凛乃が望むとおりにしたら、もっとそれが難しくなりそうな気がする。凛乃から累が受け取るものが、労働じゃなく金銭そのものになることの落差は大きい。
スマートフォンが入った胸ポケットが、急に冷たく重く、ずり下がっていくような感じがした。
「売ってもらえますか?」
懇願するように問いかける凛乃の肩から手を離し、累は浮かせていた腰を下ろした。
切り札を持っているつもりでいた。でも、累の願いが凛乃の住処を確保することではない以上、主導権は凛乃に移っていた。
「どうして、ここ?」
累は凛乃の問いに質問で返した。
支払い能力なんて、どうでもいい。欲しいなら売ってかまわない。どのみち累が凛乃の命綱を握っている現状を脱しないと、差し引きなしで想いを伝えることもできない。
でも凛乃が望むとおりにしたら、もっとそれが難しくなりそうな気がする。凛乃から累が受け取るものが、労働じゃなく金銭そのものになることの落差は大きい。
スマートフォンが入った胸ポケットが、急に冷たく重く、ずり下がっていくような感じがした。
「売ってもらえますか?」
懇願するように問いかける凛乃の肩から手を離し、累は浮かせていた腰を下ろした。
切り札を持っているつもりでいた。でも、累の願いが凛乃の住処を確保することではない以上、主導権は凛乃に移っていた。
「どうして、ここ?」
累は凛乃の問いに質問で返した。