北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「売ってまとまったお金が入れば、手ごろな広さの、ペットが飼える中古マンションの頭金くらい賄えます。もう土地だけの分の値段だとしても、一財産ですよ。それを棒に振るんですか。それにいらないんなら、わたしに売ってください」
「凛乃と、売り手と買い手になるのはいやだ」
「すぐじゃないけどぜったい払います」
「そういうことじゃなくて」
「じゃあなにがダメなんですか」
 気持ちの読めなさにイラついて、思わず怒りを声に載せた。累は凛乃の表情を確かめるように目をあげて、あきらかにオロついた。
「じゃあ、あげる」
「え? あげる、って、くれるってことですか?」
「そう」
「いやいや、そんな気軽に言わないでくださいよ。家ですよ? 分割で買おうと思ったときだって相当おののいたのに、タダって」
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