北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「まったくもぅ、服に無頓着すぎです。Yシャツが瀬戸さんのお下がりだとか信じられないですよ。ぜんぜん体型ちがうじゃないですか」
「お下がりじゃなくて、佐佑が買いまちがえた新品」
「そういうのもお下がりでいいですぅー」
ニコニコと叱る凛乃は、とても浮かれているように見える。しぜんと、累の口角もあがる。
これはと思ったのか、凛乃は手にしたスーツを累の肩の高さまで掲げた。身体に当ててみせた一瞬、凛乃の指先が累をかすめた。
「時間があれば、いまの金額でセミオーダーもいけるんですけどねー。打ち合わせの2日前に言いだすとか遅すぎです」
「ごめん」
「あ、いや、責める権利ないですね、わたしが勝手についてきてるのに。わたしこそ、すみません」
「もっと言うと、せっかく縫い合わせてくれたのに、買うことにしてごめん。でもたぶんまた破るから」
「また謝って……」
他人行儀な謝り合いの果てに、凛乃が笑った。
「お下がりじゃなくて、佐佑が買いまちがえた新品」
「そういうのもお下がりでいいですぅー」
ニコニコと叱る凛乃は、とても浮かれているように見える。しぜんと、累の口角もあがる。
これはと思ったのか、凛乃は手にしたスーツを累の肩の高さまで掲げた。身体に当ててみせた一瞬、凛乃の指先が累をかすめた。
「時間があれば、いまの金額でセミオーダーもいけるんですけどねー。打ち合わせの2日前に言いだすとか遅すぎです」
「ごめん」
「あ、いや、責める権利ないですね、わたしが勝手についてきてるのに。わたしこそ、すみません」
「もっと言うと、せっかく縫い合わせてくれたのに、買うことにしてごめん。でもたぶんまた破るから」
「また謝って……」
他人行儀な謝り合いの果てに、凛乃が笑った。