北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
 なんにも変わっていない。それどころか悪くなってる。こんなわたしは許せないと意地を張る力もない。甘やかしてくれるところへ、逃げ帰るだけ。
 歩き出そうとしたらふらついて、たたらを踏んだ。コンクリート製の柱をぎりぎり避けたつもりが、手にしていたエコバッグが宙に浮いて、手にイヤな衝撃が伝わった。
 凛乃はいまさらエコバッグをかばうように方向転換した。その先に、見慣れた立ち姿があった。
 アンクル丈のロールアップデニムにTシャツ、凛乃が出かけたときと同じ恰好だ。壁によりかかって、さっきの凛乃のように雨垂れを眺めている。
 会いたくないと思っていた。でも顔を見たら、投げやりにどうでもよくなった。かっこ悪い自分のまま、累の前に出るしかない。
 累がようやくこちらを向いて、凛乃に目を留めた。手でも挙げて気を引くでもなく、声をあげるでもなく、彫像みたいに動かない。
 目の前までのろのろと歩いていって、訊いてみた。
「これからお出かけですか?」
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