北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
 結局、2人で分けられる安いアイスをひとつ買って、出口近くのラックから無料求人誌を手に取って外へ出た。
 影のように背後について店内を回っていた累が、すっと横に並ぶ。
「眠れてない?」
「どうしてですか?」
 答えづらい問いには、質問返しに限る。凛乃はアイスのチューブを揉むのに熱中するふりをした。
「さっき、サンドタイマー見てればよく眠れるって」
「そんなこといいましたっけ」
「焦ってるように見える」
 凛乃は傘をかたむけて、累の顔を見上げた。累は器用に腕を傘の持ち手にからめて、アイスを齧るように吸っている。
「昼の仕事を探すって言ってたのに、また夜勤を選んでるみたいだし、職種も一貫してないようだし」
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