北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「長く続けられそうとか、ブラックじゃないとか、経験を活かしたいとか、そういう絞り込みしてる場合じゃないんです。引っ越すためにはお金、お金を得るためには就職、まともな額を貯めようとしたら一刻も早くちゃんとした仕事をしないと」
思い出したくもないのに、数時間前の光景が脳裏をよぎる。募集要項に『3時間から可』と謳っていたのに、実際は朝までのフルタイムを求められた。
「空いた時間だけ働きたいなんて、仕事バカにしてるよ。家事代行なんか、それこそ暇な時間にやるもんだ」
自分ごと否定されたようで、混乱した。簡単に混乱するほど、仕事にも生活にもまるで自信がないのを、思い知らされた。
「精一杯やってるつもりだったんですけどね、いまのままじゃダメなんですよ」
「凛乃はちゃんと仕事してるし、おれは追い出したりしない」
累の親切が、いまはやるせない。歩きかたがわからなくなって、足がもつれそうになる。
「でも、ノミがいくら懸命に生きたところで、寄生されてる猫は迷惑でしかないじゃないですか」
「なんの話?」
累の怪訝な顔を、直視できない。
思い出したくもないのに、数時間前の光景が脳裏をよぎる。募集要項に『3時間から可』と謳っていたのに、実際は朝までのフルタイムを求められた。
「空いた時間だけ働きたいなんて、仕事バカにしてるよ。家事代行なんか、それこそ暇な時間にやるもんだ」
自分ごと否定されたようで、混乱した。簡単に混乱するほど、仕事にも生活にもまるで自信がないのを、思い知らされた。
「精一杯やってるつもりだったんですけどね、いまのままじゃダメなんですよ」
「凛乃はちゃんと仕事してるし、おれは追い出したりしない」
累の親切が、いまはやるせない。歩きかたがわからなくなって、足がもつれそうになる。
「でも、ノミがいくら懸命に生きたところで、寄生されてる猫は迷惑でしかないじゃないですか」
「なんの話?」
累の怪訝な顔を、直視できない。