北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
 身体を固くしていた凛乃も、安らかな息を漏らす。冷却シートを額に貼りながら、聞いてみた。
「身体起こせる?」
 凛乃はそうしようとしたけど、肘をついて肩を起こした状態で空のグラスをつかむのがせいいっぱいだ。
 累は凛乃の肩を引き上げつつベッドに腰かけて、自分にもたれさせた。グラスの代わりにペットボトルを握らせ、キャップを取ると、凛乃はそっと口を寄せた。でも数口も飲まないうちに、重そうにペットボトルを下ろす。
「すみません、こんなこと」
 聞き流した累は凛乃からペットボトルを取り上げて、ベッドに寝かせた。
「なんにも考えなくていいから」
「すみません……」
 凛乃は寝顔を見られるのを嫌がるように、顔を壁に向けた。世話をすればするほど、凛乃は恐縮してしまう。累は斜めにずれたタオルケットに手を伸ばすのをやめて、ペットボトルのキャップを静かにしめた。
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