北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
 ゆっくり顔を近づけて鼻先があたると、凛乃の目がうっすらとひらく。近すぎてわからないのか、まどろみの淵が深いのか、ぼんやりと見返すだけだ。
 カサついた口唇に触れた。隙間に液体を少し注ぐと、凛乃は搾り取ろうとするように口をすぼめる。こくりとその喉が鳴った。
 累は口中に残る分を、自分の喉に落とした。そっと身体を離して凛乃を見下ろすと、乾いていても弾力があったふくらみは、潤んでいるようだった。
 もう一度、甘い水を口に含む。一口飲ませてみると、凛乃はかすかに息をついてもまだ、追加を求めるように口唇の接点に留まっている。累は凛乃を押し開いて、あるだけぜんぶ注ぎ込んだ。
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