北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
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共同生活を始めたころよりもひどい。凛乃とはついに丸1日、顔を合わせなかった。
昼過ぎにどこかへ出かけて行ったのは知っているけど、声はかけてくれなかったし、声をかける勇気は出なかった。
お互いが自分のテリトリー外に出るときに相手の動向を探って、避けるように動いていた。いっしょに暮らし始めたときの、遠慮のし合いとはちがう。近づくのが怖い。
不在の隙に部屋からノートパソコンを持ってきたから、仕事はできた。飲食には困らない。でもこれがずっと続くことを想像したら、1日で音を上げそうになっている。
モニター画面に見入っても、なにが書かれているのかが、わからない。文字がまったく意味をなさない。凛乃は帰ってこない。
「ばあちゃん、どうして、しるこを外に出すの? また怖い猫に噛まれるよ」
縁側の窓を開けて猫の通り道を作る祖母に、こどもだった累は不満を押さえず訊いた。
「あの子が行きたいんだから、しかたないよ」
「ネージュはずっと家にいたよ。外に出ちゃ危ないんだって」
「最近はそうするみたいだね。でもあの子は外に出て育ってきたから、いまさら閉じ込められたらつらいんだと」
共同生活を始めたころよりもひどい。凛乃とはついに丸1日、顔を合わせなかった。
昼過ぎにどこかへ出かけて行ったのは知っているけど、声はかけてくれなかったし、声をかける勇気は出なかった。
お互いが自分のテリトリー外に出るときに相手の動向を探って、避けるように動いていた。いっしょに暮らし始めたときの、遠慮のし合いとはちがう。近づくのが怖い。
不在の隙に部屋からノートパソコンを持ってきたから、仕事はできた。飲食には困らない。でもこれがずっと続くことを想像したら、1日で音を上げそうになっている。
モニター画面に見入っても、なにが書かれているのかが、わからない。文字がまったく意味をなさない。凛乃は帰ってこない。
「ばあちゃん、どうして、しるこを外に出すの? また怖い猫に噛まれるよ」
縁側の窓を開けて猫の通り道を作る祖母に、こどもだった累は不満を押さえず訊いた。
「あの子が行きたいんだから、しかたないよ」
「ネージュはずっと家にいたよ。外に出ちゃ危ないんだって」
「最近はそうするみたいだね。でもあの子は外に出て育ってきたから、いまさら閉じ込められたらつらいんだと」