北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
 持て余したボトルの置き場所を探して身体をひねると、壁の空間にはまったベッドが目に入った。
 むき出しのマットレスが固い石板のようだ。はがされたシーツとともに、触れられそうに近かった凛乃のぬくもりも消え去ってしまった。
 累は髪をくしゃくしゃとかきまわすと、今夜2度目のシャワーを浴びるために立ち上がった。
 行く手のドアが、ふいにゆっくり開きだす。
 エアコンを入れると同時に確認したから、閉め忘れのはずはない。人為的だと確信するほど開いたとき、すきまから凛乃が恐る恐る顔を出した。
 きょろきょろと部屋を見回すのと目が合う。さっと引っ込みかけた頭が、半分はみ出した状態で静止した。
 大股でドアまで行き慎重にドアノブを引くと、反対側を握っていた凛乃がついてきた。勢いあまって累の胸に飛び込みそうなところを、押しとどめる。
「りんの」
 呼びかけようとした口が、アルファベットでnが続いたあたりで凛乃の両手でふさがれた。
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