北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「落ち着くまで、こうしてていい?」
反抗するなんて考えはみじんも浮かばずうなずくと、すとんと腰を下ろした累の、投げ出すように伸ばした長い脚にとりかこまれた。胸元に顔をうずめると、かすかな汗の匂いやボディソープらしいシトラスの香りが、鼻を抜けた。
後頭部に添えられた累の手が、髪を撫でる。目を閉じてそれを余すことなく享受すると、がちがちに硬直していた四肢は、するするとほどけていった。
わたしはこんなにも簡単に、このひとに揺るがされる。
ふがいない自分への八つ当たりで、累のTシャツの腹あたりをぎゅっと掴む。累がさっと身体を離した。
「汗くさかった?」
顔をのぞきこもうとしているのがわかって、凛乃は首を横に振った。こんなにくっついていることの生々しさに、むしろクラクラしていたのが恥ずかしくて、顔を上げられない。見られてしまうくらいなら。
「もう少し、撫でてもらっていいですか?」
決死の思いで絞り出した。
反抗するなんて考えはみじんも浮かばずうなずくと、すとんと腰を下ろした累の、投げ出すように伸ばした長い脚にとりかこまれた。胸元に顔をうずめると、かすかな汗の匂いやボディソープらしいシトラスの香りが、鼻を抜けた。
後頭部に添えられた累の手が、髪を撫でる。目を閉じてそれを余すことなく享受すると、がちがちに硬直していた四肢は、するするとほどけていった。
わたしはこんなにも簡単に、このひとに揺るがされる。
ふがいない自分への八つ当たりで、累のTシャツの腹あたりをぎゅっと掴む。累がさっと身体を離した。
「汗くさかった?」
顔をのぞきこもうとしているのがわかって、凛乃は首を横に振った。こんなにくっついていることの生々しさに、むしろクラクラしていたのが恥ずかしくて、顔を上げられない。見られてしまうくらいなら。
「もう少し、撫でてもらっていいですか?」
決死の思いで絞り出した。