北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
累の指が髪に潜る。耳に押し付けられているのはたぶん頬。熱い吐息が首筋に降る。
「ごめん。好きになってしまった」
謝罪とは裏腹に、身じろぎすると抵抗に遭った。「累さん」名前を呼ぶと、名残惜しそうな手が二の腕をすべりおりていく。そのまま離れていきそうな手を摑まえて、凛乃は累を真正面から見つめた。
「そうなんですか?」
ハチミツ色の目が、率直すぎる問いを受け止める。
「でも、なにもしない。凛乃の邪魔はしない。おれのこと好きじゃなくていいから、どこにいってもなにをしてもだれを好きになるのも自由だから、ここに帰ってきて」
びっくりして熱くてふわふわして破裂しそうに暴れだす胸を、凛乃はぎゅっと押さえた。
「累さんもしかして、わたしが累さんのこと好きで好きでしょうがなくて出ていくの、知らなかったですか?」
さっきの凛乃がそうだったように、累が意表を突かれた顔をする。ややあってつぶやいた。「……おれの思ってたことがバレたから出ていくんだと思った」
笑えるほど、すれちがっていた。でもその重みは、笑い飛ばせるほど軽くなかった。興奮と期待と歯がゆさで、ふたりそろって言葉を失くした。
「ごめん。好きになってしまった」
謝罪とは裏腹に、身じろぎすると抵抗に遭った。「累さん」名前を呼ぶと、名残惜しそうな手が二の腕をすべりおりていく。そのまま離れていきそうな手を摑まえて、凛乃は累を真正面から見つめた。
「そうなんですか?」
ハチミツ色の目が、率直すぎる問いを受け止める。
「でも、なにもしない。凛乃の邪魔はしない。おれのこと好きじゃなくていいから、どこにいってもなにをしてもだれを好きになるのも自由だから、ここに帰ってきて」
びっくりして熱くてふわふわして破裂しそうに暴れだす胸を、凛乃はぎゅっと押さえた。
「累さんもしかして、わたしが累さんのこと好きで好きでしょうがなくて出ていくの、知らなかったですか?」
さっきの凛乃がそうだったように、累が意表を突かれた顔をする。ややあってつぶやいた。「……おれの思ってたことがバレたから出ていくんだと思った」
笑えるほど、すれちがっていた。でもその重みは、笑い飛ばせるほど軽くなかった。興奮と期待と歯がゆさで、ふたりそろって言葉を失くした。