北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
 立ち上がって、開け放たれていた障子戸から縁側の先を見る。広がる庭は案の定、荒野になっていた。心洗われる景色ではないけど、さわやかな風はよせてきた。
「こまめに部屋に風を通してるんですね。人を雇うほどの片づけは必要ないんじゃないですか? 廊下の荷物も、その気になればすぐに」
「2階が」
 累はそれだけ言って歩き出してしまう。凛乃は着物箪笥の抽斗を全部閉めてから、小走りであとを追った。
「そこが納戸」
 階段を上がりながら、上がりきった先の正面のドアを、累が指さす。普通のドアより少し小さい。上下関係としては、キッチンとリビングの境目あたりだ。
「そのとなりがおれの寝る部屋だったところ。こっちの奥の部屋が、仕事場」
 2階フロアに立って、身体を反転させる。階段と平行に細い廊下が少しあって、ドアが二つ並んでいる。
「だったところ、というのは?」
 じゃあいまはどこで寝てるんだって話だ。
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