北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「いらないものもろもろ置いてたら、寝る場所がなくなって、いまは仕事場にベッドを置いてる」
「最低限の空間で生活してるんですね」
「どこから見る?」
累の声が上から降ってきた。こうして並んで立ってみると、累は意外に背が高くて、視線を合わせようとすると、どちらかが首を急角度に曲げなければならない。累はそのどちらも採らずに、壁に向かって話しかけている。
「いちばん片付けがたいへんなところから」
凛乃は張りあうようにアゴを上げて、挑発的に言った。
 累が、かつての寝室のドアを開けた。化粧品や美容系と思われる幾多のパッケージ、家電や健康器具、本や雑誌、インテリア雑貨におもちゃに得体のしれないモノ。とにかく雑多なモノが、所狭しと置いてある。
「……なかなか暴れん坊なお部屋ですね」
 ウソ偽りなしだ。魔境。ここで寝るのはムリ。
「通販にハマってるとか?」
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