北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「気に入った?」
「すごく」
 力強く言い切ると、累はふっと息を吐いた。
「あとは、わたしとしては、さっきの条件を飲んでいただけるかどうかです」
「飲む」
「めちゃくちゃな条件だから、会社を通せません。個人間の契約になりますけど、ちゃんと明文化して、きちんと契約書を交わしたいです」
「もちろん」
 凛乃はうなずいた。
「このお部屋を間借りさせていただきます。半年間、どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ」
 お辞儀しあって顔を上げると、累が自分の手をしげしげと見ている。「こういうときって、握手……?」
「さぁ。ドラマとかなら見たこともありますけど」
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