北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「町内会のこととか。あいつは地域の青年会だのに入ってて、おれの代理も兼ねてるから」
「至れり尽くせりですね。わたしを雇わなくても、瀬戸さんがいれば暮らしていけるんじゃ」
「あいつは家に入れない」
 きっぱりと、累は言い切った。
 でもわたしはここにいる。
 少し照れくさいような落ち着かなさで、凛乃はパンをちぎった。
「ごちそうさま」
 累がカラの皿とガラスコップを持って立ち上がった。
「1枚だけでいいんですか?」
「昼前に出るから、満腹になりたくない。眠くなる」
「出る? って、なにがですか?」
 凛乃の横を通り過ぎるときに、累は首をかしげた。
「外出するってことだけど」
「ええっ、出かけるんですか?!」
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