北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
   ◆
 洗濯も終えて廊下の荷物を仕分けていると、累が部屋から出てくる音がした。そろそろ真昼に差し掛かる。出かけるということだろう。凛乃は手を止めて、声を張り上げた。
「あのー、キャットタワーなんですけど、処分していいんですかー?」
 目につく不用品はすみやかに消したほうが、片づけた実感が大きい。ましていま猫を飼っていないなら、置いておくだけ無駄だ。
「……一応、そのままで」
 煮え切らない返事を携えて、累が階段を降りてきた。その出で立ちは、明らかにオーバーサイズのワイシャツ、センタープレスが最早あやういチャコールグレーのスラックス、指先でぶらさげた同色のジャケット。
「頭、痛い?」
 思わず眉間を押さえる凛乃を気遣う声がする。
「なんでもないです。だいじょぶです」
 わたしがスーツフェチだと知っての狼藉か。
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