北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
 でも累は二千円を凛乃に押しつけた。
「駅前でおろしてくる。維盛さんは、箪笥からカギとばあちゃんの財布、探しといて。これからそれに経費を入れる」
「わかりました」
 条件面では話し合ったけど、こういう細かいところまではつめてなかった。
 決めたことは、あとで書いておこう。きちんとしておかなきゃ。
 靴を履く累の背中に、凛乃は問いかけた。
「夕飯はなにがいいですか? リクエストに必ず応えられるとは限りませんけど」
「なんでもいい」
 立ち上がって、累は肩越しにそっけなく答えた。
「好き嫌いはありますか?」
「好き嫌い……」
「あるんですね。なんですか?」
「焼いたナスのどべっとした感じが……」
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