北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「なんで正社員の話、断っちゃったの?」
仲のいい同僚にはすごく驚かれた。彼女は中途採用の同期だったけど、正社員だった。
「だって、正社員になると辞めづらくなるでしょ」
「辞めるつもりなの?」
「すぐってことじゃないよ。カレシが転勤族なんだよね。今年中か来年には、辞令が出そうだって言うから」
「ついていくんだ?」
「ついてきてって言われたら仕方ないかなって。いまの仕事、向いてるとは思うけど、どこに行っても同じようなことできるからね。このご時世、正社員のお誘いはありがたいんだけど」
いつでもついていける身であることは、選ばれるためのアドバンテージになると思った。でも凛乃は派遣先から切られ、選ばれもしなかった。
それが、結果だ。わたしがいままでやってきたこと、やらなかったことの。
どんなにちゃんとしているつもりでも、軸が自分の中になかった。それが抜けてしまったら、ふにゃふにゃの外殻だけでは、ひとりで立つこともできない。
仲のいい同僚にはすごく驚かれた。彼女は中途採用の同期だったけど、正社員だった。
「だって、正社員になると辞めづらくなるでしょ」
「辞めるつもりなの?」
「すぐってことじゃないよ。カレシが転勤族なんだよね。今年中か来年には、辞令が出そうだって言うから」
「ついていくんだ?」
「ついてきてって言われたら仕方ないかなって。いまの仕事、向いてるとは思うけど、どこに行っても同じようなことできるからね。このご時世、正社員のお誘いはありがたいんだけど」
いつでもついていける身であることは、選ばれるためのアドバンテージになると思った。でも凛乃は派遣先から切られ、選ばれもしなかった。
それが、結果だ。わたしがいままでやってきたこと、やらなかったことの。
どんなにちゃんとしているつもりでも、軸が自分の中になかった。それが抜けてしまったら、ふにゃふにゃの外殻だけでは、ひとりで立つこともできない。