北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
 これなら暮らしていけそう。
 それでも夜明け前、累が部屋を出てシャワーを浴びたり食事したりするかすかな音で、凛乃は浅い眠りから覚めた。野生動物が常に警戒しているみたいに、累の気配を探って神経が尖っていたらしい。
 カーテンのない窓から挿しこむ光が、なにもない暗い部屋を徐々に露わにしていく一部始終を眺めて、凛乃は起床時間を迎えた。
 ちりん。
 かすかに聞こえて、凛乃は重いまぶたを上げた。いつのまにか、まどろんでいたらしい。
 首を巡らせて探してみたけど、音の出どころは見当たらない。
 リビングかとめ子さんの部屋のどこかに、鈴が落ちてるのかな。部屋を片づけてたらそのうち見つかると思うけど。
 あくびをして時計を見ると、いままでの自分の習慣ならもう夕飯後のくつろぎタイムだ。でも累はまだ帰ってこない。
 おなかは空くし、なんとなく人恋しくすらなって、凛乃は冷蔵庫を開ける。
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