北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
 さんざん悩んだ挙句のメニューは、鮭のバター焼きと玉ねぎと卵のお味噌汁。
 冷蔵庫には、おかずになりそうな食材がまったくない状態だった。調味料も、醤油はあるけど味噌はない。塩はあるけど出汁の素はインスタントすらない。この現状での二千円では、明日の朝のトーストにも味がつくくらいまでしか進めなかった。
 とめ子さんの財布は見つかったから、いま立て替えて家計をややこしくするのもめんどうだしな。
 地図アプリで探し出した最寄りのスーパーマーケットのなかを、凛乃はぼんやりしながらあてもなく歩き回った。初めての店だから、どこになにがあるか知らない。底値を知らない。欲しいと思うものが思い浮かばない。
 小野里とめ子名義のポイントカードは、有効期限が切れていた。作りなおしますかと訊かれて、断った。
 どうせ半年しかここにはいない。
 そうやって自分からここでの生活を拒否しているようでいて、所在なさには途方に暮れる。
 あの感じだと、決まった時間に食べてないのかな。早く帰ってこないかな。
 累が考える“夕飯の時間”がわからないから、いつになったら帰るのかもわからない。
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