北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
 どう応えたものかと迷っていると、ポストのルーバーがぱたんと開いた。表から郵便物を入れれば、シューズボックスの上に載るよう配置されている。そこから、謎の黒い物体がもりもりと侵入しだした。
「え、ちょっと、なんですか?!」
「おれの奥ちゃんからの差し入れ。おれの母親にもらったけど趣味じゃないから使ってもらえればって」
 よく見れば、真っ黒じゃなくて、濃いめのブルーだ。そうとわかって押しとどめようとしたけど、あっというまに全部押しこまれた。
「割烹着? だっけな。家政婦さんには必需品だよね? あっ、でも、気に入らなかったら捨ててもらっていいから!」
 ルーバーはこっち側にしか開かないから、返そうと思ったらドアを開けなければならない。凛乃はしかたなく割烹着だというそれを取り上げた。
 ポケットに縫い付けられた、ヘタウマ風の三毛猫アップリケが目につく。奥方に同情したところで、中からピンク色の紙が覗いているのに気付いた。
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