北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
 無言付きでスマートフォンが返ってくる。
「ありがとうございます。なにかあったら連絡します」
 そこから食事が終わるまで、食卓にはひとこともなかった。
 反省が襲ってきたけど、謝るタイミングも言葉も見いだせなかった。せっかくできた味方を失いたくなくて、意地を張りすぎた。
 累の沈黙は、会話がいらないんじゃなくて、会話を押し殺すような口の閉ざしかただ。でも怒っているのとも、ちがう気がする。
 あ。もしかして、わたしに瀬戸さんを盗られると思ってる?!
 最後の一口を噛みながら、凛乃は愕然として箸をくわえた。
 見た感じ、累にとっても佐佑は唯一の味方で、友達で、幼馴染だ。表向きはそっけない態度をとっていても、昨日今日現れた女に親友を独り占めされたら、不愉快も甚だしいはずだ。
 やっぱり謝ろう。
 累が食べ終わった食器を重ねて、席を立つ。
「あの!」
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