北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「……祖母は死にましたけど。2年前に」
「は?」
 思わず仏壇を見る。遠目では写真立てがひとつあることしかわからない。
 だったらおじいちゃんの写真だろうなーって、勝手に決めつけてた。でもあれが、とめ子さん?
「え、で、でも今日この時間に面接したいってFAXが来たって、紹介所の人が」
「あ……返事書いたのは、おれです。そういえば、宛名がばあちゃんの名前になってたかも。最初に登録したのは、ばあちゃんだから」
「そういうこと、ですか」
「おれは、小野里 累、です」
「それはどうも……」
 いい加減な返事をして、凛乃は動悸が激しい胸を押さえた。
 そういえば、顧客情報からもあやしい雰囲気は出ていた。初回登録は4年前、そのまま一度も利用されなかったのに、1カ月前に顧客リスト宛てに送られたキャンペーンDMに応じる形で、突然、家政婦の紹介を依頼してきた。『住み込み』の項目にチェックが入っているかどうか以外は不安要素には目をつぶったのが、この結果だ。
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