北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「なんとなくは」
「それ。小さいときに手続きすることが多いみたいだけど、おれは産まれるまえから小野里の籍に入ることが決まってた」
「だとすると、お父さんとも、とめ子さんとも」
「血はつながってない。でも家族じゃないとは思ってない」
 うなずいた凛乃は、それを見せるために身体をまえにかたむけて、障子戸から顔だけ出した。
「この部屋、いつもきれいにされてるから、とめ子さんのこと大切にされてるんだなって思ってました。お仏壇のまわりとかぴかぴかで、お線香はいっぱい在庫あるし」
「最期は病院だったから」
 累はうしろに首をかたむけて、天井を眺める。
「帰ったら庭を眺めたい、キレイにしといて、空気の入れ替えしといてって、遺言みたいなもので」
「水回りの掃除とかも、すごくキッチリされるじゃないですか。そこも、とめ子さんの希望で?」
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