北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「落ちたね」
「落ちましたね」
ふたりのあいだに落ちたのは、沈黙だった。一方的に叩きつける雨の音は単調で、庭はグレーのグラデーションに揺らいでいる。
凛乃は、累がさっきの発言をすぐに忘れてくれたらいいのにと願った。累が語ってくれたことに比べたら、自分の愚痴には奥行きがまったくない。
立ち上がろうというのか、手を畳に置いて身体の重心をずらした累に向かって、凛乃はとっさに話を戻した。
「猫、また飼うつもりなんですよね?」
「え?」
「だって、キャットタワーはそのつもりで残してるんじゃないんですか? 里子に出した白猫以外のきょうだいから、白猫が産まれてるかもしれないですよ」
累が、おたがいの顔が見える場所に片膝を立てて座りなおした。
「ずっといっしょに暮してたけど、白猫たちは母親とばあちゃんの猫。おれはおれだけの……」
「落ちましたね」
ふたりのあいだに落ちたのは、沈黙だった。一方的に叩きつける雨の音は単調で、庭はグレーのグラデーションに揺らいでいる。
凛乃は、累がさっきの発言をすぐに忘れてくれたらいいのにと願った。累が語ってくれたことに比べたら、自分の愚痴には奥行きがまったくない。
立ち上がろうというのか、手を畳に置いて身体の重心をずらした累に向かって、凛乃はとっさに話を戻した。
「猫、また飼うつもりなんですよね?」
「え?」
「だって、キャットタワーはそのつもりで残してるんじゃないんですか? 里子に出した白猫以外のきょうだいから、白猫が産まれてるかもしれないですよ」
累が、おたがいの顔が見える場所に片膝を立てて座りなおした。
「ずっといっしょに暮してたけど、白猫たちは母親とばあちゃんの猫。おれはおれだけの……」