浅葱の花にとまる蝶
(!?)
びっくりして顔を上げる。
(わぁ…)
そこに居たのはひとりの男で、もう驚いて逆に冷静になった。
亜麻色の少し癖のある背中までの髪は高い位置で纏めていて、少しタレ目気味の目は優しげな印象を与える。
女性とも見える中性的な顔はたいそう美しいが、180cmはあろうかと言う長身の背丈と引き締まった体つきで男だとわかる。
一言で言うならイケメンだろう。
現代日本で言ったらジャニーズなんかにいそうな顔立ちだ。
が、そこは別に問題ではない。
では何が問題なのか。
それはこの男の着ている羽織にある。
(浅葱色の、だんだら模様…ほんとに着てたんだ…)
浅葱色のだんだら羽織。
それ即ち、新撰組を表す。
まぁ、正確には未だ壬生浪士組だが。
つい2時間ほど前に過去の出来事として習った人達が目の前で鞄を拾ってくれると言う異常事態だが蝶は一旦スルーすることにしたようだ。
「あ、はい。それ私の鞄です。拾っていただいてありがとうございます。」
素直にお礼を言って受け取ろうとする、が。
「いえいえ!さっきの体術はお見事でしたねぇ!あ、ところでお名前なんて言うんですか?」
受け取ろうとした手をヒョイっと避けて喋り始めた。
(え)
まぁでもそこは蝶である。
話しかけられたら無碍には出来ないし、するつもりもない。
「そんなことないですよ〜。さくら蝶と言います。」
…それに褒められると嬉しいのだ。
「蝶さんですね!あ、僕は沖田総司と言います!蝶さん、これからちょっと屯所まで着いてきて貰いますね!!」
(ん!?)
ちょっと情報が多すぎて整理できない…
(屯所?は、多分壬生浪士組の屯所の事だよね…)
(それより沖田総司!?この人が!?あの絵書いた人はよっぽど具合が悪かったんだなぁ…)
偉人が目の前にいるのに考える事はやっぱり残念な蝶だった。
「ーーーーーか?」
「はい!?」
(やばい全然聞いてなかった)
「すみません、もう一d「ありがとうございます!では行きましょう!」え、あの」
(え!?話きいて!?)
「屯所はこっちですよ〜」
「いや、だからあの沖田さん?話を…」
「蝶さん?」
ぴく。
おかしいな。
あの優しげな沖田さんの後ろに黒いオーラが見える気がする。
ニコニコしてるのに「口答えすんじゃねぇ」的な字幕が見える気がする。
こんな事になっては蝶の答えは1つしかない。
「な、ナンデモアリマセン。」
「?そうですか。では行きますよ。」
にこにこと笑うその顔が恨めしい。