浅葱の花にとまる蝶
幸いと言うべきか、部活に行く所で袴を履いていたのでそこまで目立ちはしないだろう。
…背中にあるリュックを除けば。
竹刀はあの時飛んでいったけど、鞄は背負ったままだった。
教科書は学校に置いているので入っているのはノートや筆記用具にお菓子や日用品だけだろう。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!」
さぁどうしようかと悩み始めたところで女性の悲鳴が聞こえてきた。
(っ!?なに!?)
困ったことに、さくら蝶。
困っている人は放っておけないたちなのだ。
ほぼ反射的に声の聞こえた方へ駆け出す。
ざわざわと人が集まっている場所をみつけ「すみません、通してください!」と言いながら人を割って行くと中心にはふたつの影があった。
綺麗にまとめた女性の髪を乱暴に掴む男。
心がスっと冷え、気づけば男の前に女性を守るようにして入っていた。
「あぁ"?なんだぁ?坊主!?」
近づいてわかったがこの男酒臭い。
恐らく結構酔っている。
(震えてる…)
ちら、と後ろの女性に意識を向ければカタカタと震えながら本当に小さな声で「助けてくださいまし」と私の袴の裾を掴んでいた。
「怖かったですね。ここは危ないですから、少し離れていてくださいね。」
女性に視線を合わせるようにしゃがみ、安心させるようににこっと微笑んで言った。
こくこくと頷き女性が離れたのを確認してから、目の前の男に向き直る。
(それにしても、さっき坊主って言ったなこの人…私男っぽいのかな?)
この時代、ポニーテールは男という印象が強い。
蝶はポニーテールに袴を履いているので間違えられたのだろう。
…最も、身長がさほど高くないために子供認定されたが。
「お待たせして申し訳ありませんでした。あの、先程の女性と何かありましたか?」
「あぁ"?あの女がよお、俺にぶつかってきやがったんで「謝罪は体でしろ」つって引張てくとこだったんだよお」
ヒック、と赤い顔でベラベラとほざく男。
「それを邪魔しやがっててめぇ餓鬼だからって容赦しねぇぞ!!!」