悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

「ええええ!? 聞いてないんだけど」

 彼氏がいることは知っていた。けど、のろけを聞くのはつまらないので、つっこんだことは聞いたことがなかった。

「だって、秘密だったんだもの。でも、もう暴露しておくね。私、宮瀬先生と付き合ってたの。で、式より先に籍を入れて同居するの」

「宮瀬先生って、あの宮瀬先生?」

 亜里はそれ以上二の句が継げなかった。

 宮瀬先生とは、外科のイケメンドクターだ。若いのに腕も確かで、患者や看護師からも同僚医師からの信頼も厚いという。

(ドクターと、結婚……)

 呆然とするだけの亜里に、皐月は真剣な目で語りかけた。

「亜里はこれからどうするの?」

「……は、え……?」

「これからも仕事一筋で生きるの?」

 問われて、亜里はますます何も言えなくなった。

 今でも仕事一筋で生きているわけじゃない。どっちかと言うと、オタ活のために嫌な仕事でも頑張っているという感じだ。

 これからの自分を想像してみる。

 もうリーダー格にはなっている。後輩の指導もできるし、このままあと十年頑張れば主任になれるだろう。その後運がよければ看護師長になり、看護局のお偉いさんになり……。

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