悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
しかし家に帰れば誰もいない。ひとり寂しい部屋で、乙女ゲームをして、老いていくのか。
「別に、結婚しない人生にケチをつけるわけじゃないの。仕事を頑張って、趣味を楽しんで生きていくのもいいと思う。旦那や子供がいると、自由に動けなくなるから」
「うん……」
「でも私には亜里がムリをしているように見える。看護師ってキツイし、患者や家族はどんどん我がままになるし。自分が今後どうするか、きちんと考えるなら今だと思うよ」
亜里は黙って考え込む。
(そうかもしれない。結婚をするなら婚活をしなきゃだし、転職をするならそれも早い方がいいし)
同じように頑張ってきた同期があっさり寿退社してしまう衝撃が大きすぎて、それ以上は考えがまとまらなかった。
「私は先生が専業主婦になってほしいっていうから辞める。私自身、将来子供ができたら家にいたいって思ってたから、考えが一致してよかった」
「そっか……おめでとう! 式には呼んでくれる?」
「もちろん」
混乱しつつも笑顔を作ることができたのは、カオスな職場で平静を保つ訓練を積んできたからかもしれない。
会計を済ませてふたりが外に出ると、店の前に一台の高級車が停まった。
「あ、お迎えに来てくれた」
「宮瀬先生……!」