悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

 ルークがイケメンでも、部下の隊員たちがみんなこの大男のような輩だったら。

 考えるだけで恐ろしく、アリスの額が汗で濡れた。

「あーすんません。俺はルーク隊長の部下でカールっていいます。よろしく、お嬢さん」

 やっと名乗ったカールに分厚い手を差し出されたが、アリスはそれを握る気になれなかった。

 固まったように動かないアリスの顔を覗き込み、うーんと何かを考えているようだったカールは、ぽんと手を叩いた。

「ちょっと失礼」

「えっ、きゃあああっ」

 突然体が宙に浮き、アリスは目を白黒させた。

 気づけば、カールに抱き上げられていた。亜里の世界で言う、米俵のように。

「お嬢さんは緊張なさって動けないようだから、俺が運びますわ。じゃあ、これで失礼します」

「あっ、あのっ、娘を頼みます! ルーク殿下にもよろしくお伝えください」

 母が焦ったように言うと、のしのし歩き始めていたカールがくるりと向きを変える。

「はいはーい。どうもでーす」

 またくるりと振り返り、カールが歩き出す。アリスを担いでいるとは思えないくらい軽い足取りで。

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