悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
四時間後。
「ひいいいいいー!」
馬車が突然急停止し、アリスの体は座席から投げ出され、壁に頭をしたたかに打ちつけた。
発車するときの震動は少ししておさまり、安定した走りをしだした。少し油断してうたた寝をしていたらこれだ。
「あんたたち運転が荒いわよ! 事故ったらどうするの!」
馬車の窓から大声で叫んだら頭がクラクラして、アリスは座り込んだ。
(寝不足? 貧血? 頭を打ったから? 気持ち悪い……)
アリスは立ち上がれなくなってしまった。ぺたりと扉に寄りかかる。
「おーいお嬢さん、大丈夫かー?」
カールが無遠慮にドンドンと馬車の扉を叩く。
(静かにしてよ……)
意識はしっかりあるので、アリスはカールの騒がしさに眉をひそめた。すると。
「おい、開けるぞ」
落ち着いた低い声がして、外側の鍵が外された。
支えを失い、ぐらりと傾いたアリスの体が外に放り出される。
ぎゅっと目を瞑ったが、いつまでも地面に叩き付けられることはなかった。
(カールが受け止めてくれたのかしら)
米俵みたいに担がれたことを思い出し、アリスはゆっくり目を開ける。