悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

 四時間後。

「ひいいいいいー!」

 馬車が突然急停止し、アリスの体は座席から投げ出され、壁に頭をしたたかに打ちつけた。

 発車するときの震動は少ししておさまり、安定した走りをしだした。少し油断してうたた寝をしていたらこれだ。

「あんたたち運転が荒いわよ! 事故ったらどうするの!」

 馬車の窓から大声で叫んだら頭がクラクラして、アリスは座り込んだ。

(寝不足? 貧血? 頭を打ったから? 気持ち悪い……)

 アリスは立ち上がれなくなってしまった。ぺたりと扉に寄りかかる。

「おーいお嬢さん、大丈夫かー?」

 カールが無遠慮にドンドンと馬車の扉を叩く。

(静かにしてよ……)

 意識はしっかりあるので、アリスはカールの騒がしさに眉をひそめた。すると。

「おい、開けるぞ」

 落ち着いた低い声がして、外側の鍵が外された。

 支えを失い、ぐらりと傾いたアリスの体が外に放り出される。

 ぎゅっと目を瞑ったが、いつまでも地面に叩き付けられることはなかった。

(カールが受け止めてくれたのかしら)

 米俵みたいに担がれたことを思い出し、アリスはゆっくり目を開ける。

< 50 / 215 >

この作品をシェア

pagetop