悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
ルークは城の螺旋階段を上がり、奥から二番目の部屋のドアを開けた。
こじんまりとした城は全体的に薄暗く、ほこりっぽい。
「この城は警備隊の宿舎を兼ねているから、騒がしいときもあると思う。今日はなるべく静かにしておくように言っておくから、ゆっくり休むといい」
「あの、待って……ください」
優しくベッドの縁に座らされたアリスは、すぐに出ていこうとするルークを呼び止めた。
「なにか?」
振り返る顔は無愛想で、笑顔の欠片もない。
「ルーク殿下はどうして、私と結婚しようとなさるんですか? お会いしていきなりだったので、どうしてもわからなくて。ずっと不思議でした」
勝手に婚約して、理由も言わず、今日まで屋敷を訪ねもしない……アリスは密かに頭にきていたことをやんわり表現した。
「ああ……そうか」
ルークはアリスに向き直った。嫌味が通じたのか通じていないのか、表情からはわからない。
「理由は簡潔だ。君と一緒にいたいと思ったから」
「へっ……」
予想外の理由に、アリスは思わず赤面する。ルークは無表情で続ける。