悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

「あのような場所で憶せずに人助けをした君なら、この隊を立て直してくれると思って」

「はい?」

「見ての通り、ここの男どもは力だけが自慢の粗暴な者たちだ。そしてうちの城にはメイドがいない。舞踏会の後も早く帰って次の日の警備に備えるために、自分たちで夕食を作らねばならなかった」

 アリスの体中を、嫌な予感が駆け巡る。

「メイドはここの男連中に耐えきれず、すぐに辞めてしまう」

「だから私に、メイドの代わりをしろと?」

 亜里の記憶が悲鳴をあげた。

 毎日毎日、キツイだけで報われない仕事をした前世のように、今世でもこき使われ続けなくてはならないのか。

(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ! ダラダラしたい! ゆるゆるしたい! スローライフをエンジョイしたい~!)

 普通の王太子妃なら、上げ膳据え膳、自分で労働することなどないというのに。

 せいぜい催し物の時に、バルコニーから綺麗なドレスを着て国民に手を振るくらい。あとは子供を産めば万々歳。その後の世話は他人がやってくれる。

 いやそれだけじゃない。国民の血税で着飾り、飲食し、遊行に耽り、楽しいことばかりのはずじゃないか。

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