悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

 王子は割り当てられた領地を治めるのも仕事だ。医者がいないとは、よほど困っていることだろう。

 亜里の記憶がアリスの身を乗り出させる。

「医者はいないが、祈祷師はいる。治癒の魔法が使えるわけではなく、神に祈りを捧げるのみだ」

 ルークの答えに、めまいがしそうだった。

(魔法奨励の世界で西洋医術が流行らないのはわかるけど、祈祷師って)

 この世界では、まだ医者はメジャーな職業ではないらしい。そして、治癒の魔法が使える者は珍しく、圧倒的に数が足りない。

「頼む。君となら、もっとこの土地をいいものにできると思うんだ。力を貸してくれ」

 ルークがアリスの両手を、しっかりと握った。

 男性に手を握られ、熱く見つめられるのが初めてのアリスの胸が跳ねる。

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