悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

 翌日。

 城で形ばかりの結婚式を済ませたアリスの顔には、幸福感ではなく疲労がにじみ出ていた。

(違う……。王族の結婚式ってこんなはずじゃなかったはず……)

 自室のベッドに座ったアリスは、つい先ほど行われた結婚式の様子を思い出す。

 結婚式といえば、亜里の世界でもアリスの世界でも、一世一代の晴れ舞台となるべきものだ。なのに。

 有志で来てくれた美容師にドレスを着付けられ、ヘアメイクをしてもらったまではよかった。

 その後、城内の広間に移動したアリスは愕然とした。

 参列していたのが、国境警備隊のもっさりした男たちだけだったからだ。

 教会から呼んだ神父と、正装したルークはまともだったものの、アリスはめまいを催した。

(どうしてこれだけなの。兄弟も他の領地からお祝いに来る貴族も、ひとりもいないなんて)

 淡々と進んだ結婚式は、一瞬で終わってしまった。

 盛り上がっているのは、警備隊員だけだ。

「じゃあ、部屋に戻ろう。宴会の準備ができたら呼ぶから」

 ルークはそれだけ言い、スタスタと歩いていってしまった。

『え……ちょっと待って。これで終わり!?』

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