悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
ひとり暮らしで適当な食事とゲームばかりしていた亜里のことは棚に上げ、アリスは力説する。
最後の食事が美味しかったことだけが、前世唯一の救いだ。
「材料を買ってくればいいじゃないですか」
「買うのは割高だし、生ものや葉物は保存がきかないわ。毎日畑から新鮮な野菜をとって食べる方がいいでしょ」
今、隊員たちの主食はパンと干し肉、チーズ。そして酒となっている。塩分が高く、ビタミンが著しく欠乏した食生活だ。
「体が引き締まったら、恋人が見つかるかもよ~」
アリスの甘美な囁きに、背を向けかけていた隊員たちの耳がピクリと反応した。
「畑をひとつ確保しておいたわ。隣近所の畑で働く可愛いお嬢さんたちに色々教えてもらえるように頼んでおいたんだけど……やっぱり無理ね。やめておこうかしら」
「いやいやいややりますよ!」
「あー俺、急に鍬が持ちたくてたまらねえな!」
男たちは急にやる気を見せた。
「そう? よろしくね~」
アリスは笑顔で仕事を分配した。ルークがはただ感心して、その様子を見ていた。
とはいえ、いきなり収穫できるわけではないので、しばらくは実家から同時に送られた食品と買い物で凌ぐことになる。