ライオン王子に飼われたネコさん。
もしも彼が、変なところへ連れ込もうとしていたらどうしよう。そんな思考が頭の片隅にはあったが、杞憂だった。
「外は寒いし、騒がしいし。ここなら落ち着けるんじゃない?」
彼が連れて来たのは室内にある静かで大人な雰囲気のバーだった。
音楽はクラシック。見回しても酔いどれはおらず、周りの会話も小さくて聞こえないくらいだ。
さっきまでの喧騒と隔絶された落ち着いた場所に真白は思わずホッとしてしまった。
「真白はそんなにお酒強くないよね?」
「日本人だから、あなたに比べればALDH2の働きは弱いでしょうね」
暗にお酒は飲まないと伝えるが、それを汲み取ったマイケルは「ジュースはここにはないよ」と、日本人向けのカクテルをいくつか紹介した。
個人の家の中のバーなので、もしもジュースを飲むならここではない場所で飲むのだろうか。バーテンダーも否定はしなかった。
お酒自体は嫌いではない。
けれど、やたらとレイチェルが離れないようにと言ったことが気になって、普段以上に警戒している。
ハメは外さない。
お酒一滴も飲むつもりはなかった。
だが、ここ以外に落ち着ける場所も知らないので、しぶしぶ、度数が低いと知っているカクテル名を選んだ。
ちびちび飲んで時間を稼いだが、レイチェルから連絡は来ず、かけても繋がらない。
「無理じゃない?こういうのは朝まで続くもんだよ。レイチェルも卒業に浮かれて飲み捲ってたんじゃない?」
その通りだった。
ハイペースで飲んで酔っていた。
ところ構わずハグしたりキスしたりしていた。
(あんだけ忠告してたのはレイチェルなのに。)
彼女の酔いが醒めるまで当分かかるだろう。