ライオン王子に飼われたネコさん。

急いでベッドを降りて部屋を出る。
靴を探している余裕はなかった。

裸足で絨毯の上を駆け回る。

廊下には同じような扉がずらっと並んでいてどちらへ向かえば良いかなんて分かりはしなかったがとにかく、階段を探して走った。

(ない!!ない!!)

誰でもいいから誰かすれ違わないか。そんな期待をしているのに、ここがそういう部屋ばかりのせいか誰にもすれ違わない。

「待て!!」

後ろからマイケルの怒声。振り返ればヨロヨロとしつつも追ってきているのが見えた。

(誰か!!!)

突き当たりを曲がったり、とにかく前へ進んだ。
その先は行き止まりだった。

けれど、人がいた。

大きく張り出した出窓の壁に背を預け、寝転がっている人が。

今すぐに助けを求めなければならないのに、真白は息をすることさえ忘れてしまった。

月の光に照らされてキラキラと輝くブロンドの髪の男は眠っているだけなのにとても美しくて、まるで絵画か彫刻のように人間ではないものに思えた。

「真白!!」

遠くから聞こえるマイケルの声にハッとして目の前の男の肩を揺らし、耳元で叫んだ。

「寝てるところすみません!!どうか、助けてください!!」

「………うるっせぇな」

不機嫌そうに整った眉が顰められ、長いまつ毛に縁取られた目が開く。

さっきバーで飲んだアンバードリームよりもずっと綺麗な琥珀色をした瞳が真白を捉えた。

寝ているだけで美しい男は、目を開ければ更にこの世のものとは思えない美しい男だった。


「何?」

怒りを隠そうともしない唸るような低い声。

「真白!!」

けれど、遠くから聞こえる男の声よりもずっと怖くなかった。

「……助けてください」

ポロポロと涙が溢れた瞬間、強い力で手を引かれていた。
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