ライオン王子に飼われたネコさん。
何が起きたか分からなかった。

ただでさえ近いと思っていた男との距離がゼロになって、息を呑むほど美しい顔が目の前にある。

男の長いまつ毛が真白の顔に触れている。薄く柔らかい唇が、同じ場所にある唇に触れている。

ただでさえ息ができないのに物理的に息ができず、心臓はバクバクと音を立てていた。

漸く離れた顔を見てキスをされたのだと自覚した。

「お前、息しないと死ぬぞ。窒息死したいの?」

するりと喉を撫でられて、必死に酸素を取り込む。

(あんたが言うか!?)

窒息死しそうになったのは間違いなく目の前の男のせいだと言うのに、男はまるで真白が悪いかのように言うのは納得できない。

(え、しかも、これって、私……。)


バタバタと足音が近づいてくる。
思考はすぐに恐怖で覆われ、体が震え出した。

足の力が抜けそうになると再度男の顔が近づいてきて、そしてまた性懲りも無くキスをした。

今度は角度を変え、何度も。
何度も。

やっぱり真白は上手く息ができなくて、思わず顔を背けて息をすれば顎を掴まれて噛みつかれるようなキスを浴びせられた。

喰われる。

そう思ってしまうような深く、長く、激しいキスに頭がぼーっとして、恐怖という感情なんて奪い取っていく。

しがみつく場所を欲して、自然と足が男の腰に回っていた。


「お取り込み中すまない!!ここに日本人の女が来なかったか?」

息を切らした彼の言葉は明らかにこちらに投げかけられたものだった。

不安に揺れる真白の瞳をじっと男は見つめ、もう一度深いキスを一つ落とすと後ろを振り返った。
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