ライオン王子に飼われたネコさん。

(取り敢えずはってなんだ。)

引っかかる言い方に眉を顰め、「変なことしませんよね?フリだけですよね?」と確認する。

「変なことって?」

「さ、さっきみたいなのとか。……それ以上とか」

口にするのも恥ずかしくて、ただでさえ赤くなっている顔がもう茹で蛸だ。

真白自身、経験が乏しすぎるのは分かっている。

周りはどんどん置いていくので段々とそれが恥ずかしいとさえ思ってはいるが、だからといって見ず知らずの男に明け渡すつもりはない。

海外に行ってハメを外しましたということにだけは絶対になりたくなかった。

見た目の割にとか、年齢の割にとか。
そんなものはどうだっていい。

「好きな人とじゃないと、嫌なんです。特に初めては、全部」

馬鹿にされたって、せめて初めてくらいは自分が本当に好きになった人に。

それ以降は考える。


「……分かった」

「いいんですか?」

「つまり、"初めて"以外は手を出さなきゃいいんだろ?」

「ん?まぁ、そういうことに、なりますね?」

さっきからこの男の言い方はやけに含みがあるように感じる。一体何なのかと考える暇もなく、男は答えを言った。

「キスはもう初めてじゃないな?」

「……あ」

ほんの少し前、この男に奪われてしまった。

「ノ、ノーカウント」

「本当に付き合ってるのか疑われてもいいならそれでもいいが。下手くそなキスしかできないくせに、それらしく見せられるか?」

「うっ、」

残念ながら年齢=彼氏なしの真白には友人の経験談とドラマや漫画からの知識しかない。さっきも息継ぎの仕方さえわからず、危うく窒息死するところだった。
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