ライオン王子に飼われたネコさん。
「でも、それってあなたにメリットあります?」
好きでもない女のために付き合うフリをするのも、そのフリのために恋人らしく見せるのも。
真白はマイケルを退かせることができるが男には何の得もない話で、寧ろデメリットしかない。
「さぁ」
気まぐれか。三月までにこの男が飽きてしまう可能性の方が高そうだ。
提案したならその責任を最後まで全うしてほしいところだが、見ず知らずの男に期待する方が馬鹿らしい。
はぁ、とため息をつき、今度こそ出窓から降りようとした時だった。
「俺が得するようにしてくれたらいい」
「……ずっと得がなかったら?途中で辞めてしまいますか?」
正直なところ面倒見が良さそうには見えないし、飽き性に見える。
そんな男が三ヶ月も何の利益もなく、見ず知らずの女の面倒を見てくれるだろうか?
普通の男だってきっと御免だ。
だけど、真白の考えとは裏腹に男は真っ直ぐに彼女を見つめて言った。
「拾った責任は最後まで取る」
お互いに名前さえ知らない、今日初めて会った人。ただの他人。
高慢で自信ありげな男とは信頼関係なんて何一つ構築されていないのに。
どうしてだか、嘘一つない言葉だと思った。
何も言わなくなったことが肯定と取った男は筋張った手を真白の頬に伸ばした。
「名前は?」
「な、七瀬、真白」
この男を見つけてから今までずっと心臓がおかしいのに、これ以上おかしくなったらきっと死んでしまうのに。
「真白」
触れられただけ。名前を呼ばれただけで際限を知らないように心臓が暴れ狂う。
(本当に、全部夢かもしれない。)
アンバードリームなんて名前のカクテルを飲んだ時から全部、その名の通り夢なのではないか。
そう思うのに唇に触れた感触は間違いなく現実で。
意地悪く笑って「どうせ一回も百回も変わらない」と言ってのけた美しい男もちゃんと存在していた。
後になって、怜音と目があったあの瞬間から、真白は彼に囚われていたのだと気づいた。