ライオン王子に飼われたネコさん。
これが最後。
好きな人と過ごす最後の時間。

ドアの取っ手を押す力が弱くなる。
少しだけ開いた扉は自然と閉まった。

身の程知らずで馬鹿だとは思う。自分がそんな人間ではなく、寧ろ分別がある方だと思っていた。


「……短い間でいいから、ううん。今日だけでも、一回だけでもいいから」

ドクドクと心臓が馬鹿みたいに鳴っている。
愚かなことを言おうとしている。

でも、後悔はしない。


「本物の恋人に、して貰えないでしょうか」


アンバーの瞳が見開かれる。

怜音の言う通り、真白は襲われたって文句を言えない。だって彼女は最初からほんの少しだけ期待していた。

そうでなければ男の部屋に一人で入ろうなんて、真白なら絶対にしない。怜音だったからだ。

その最低な期待と裏腹に彼は紳士だった。

怜音の優しさを無駄にしようとしている己を恥じるべきだが、それは後。

今はもう、なりふり構っていられない。

最後だから。
ほんの一瞬でも、この男が欲しい。


「好きなの」


次の瞬間、噛み付くようなキスを浴びせられた。



どれくらい経ったのか。
真白の腰が抜けて、漸く離してもらえた。

「折角逃がしてやろうと思ったのに、自分から飛び込んでくるなんて馬鹿だな」

息も絶え絶えの真白は腰を支えられながら彼を見上げると、形のいい唇が弧を描いていた。

「いいよ。……ただし、逃げられると思うな」

逃げるつもりは毛頭ないが、獲物を見つめるようなギラギラとしたアンバーから逃げられる筈もなく、軽々と抱き上げられると寝室に連れて行かれた。

あれだけゆっくり履いたサンダルも、何時間も悩んで選んだ服も器用に取り去られ、頭の先から足の先、骨の髄まで喰らわれたことは言うまでもないだろう。
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