ライオン王子に飼われたネコさん。

           ***



(………帰ってきた。)

ルナはニヤリと口の端を上げ、脱衣所に続く扉の前に寝そべる。

ガチャ、と玄関扉が開き、足音が近づいて来た。

「あれ?ルナ、どうしてこんなところに?冷たくないの?」

抱き上げようとする銀を拒むように床にペッタリとくっつく。珍しくルナが抵抗するので「君がいいならいいんだけど」と、手を離した。

「聞いてよー。折角早く家を出たのに仕事用と家用のスマホ間違えてたんだよねー。時間があるから取りに帰ってきたけどさ、馬鹿だよなぁ」

そう言ってスマホを取りに行った銀の後ろ姿を片目で見つめ、ほくそ笑む。

銀は案外抜けているところがある。

忘れ物をしたり、上に行くはずが下に行くエレベーターに乗ってしまったり。挙げ出すとキリがないが、そういうことがよくある。

真面目さと爽やかな笑顔でカバーされて知られていないが彼はおっちょこちょいだ。

だからこういうこともよくあることだとルナは知っていた。そういう人だということも、こうなることも。


「お腹冷えちゃうから、せめて廊下じゃなくてリビングに行きな?」

抱き上げようとする銀に観念したような素振りで、さっきとは打って変わって簡単に抱き上げられる。

そして。

ガラッ。

防音対策は万全だが、防音室でもない限り完全に防ぐことはできないわけで。

「え?」

浴室が開いた音は銀に聞こえてしまう。
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