ライオン王子に飼われたネコさん。
こんな非現実的な状況は魔法でもない限り起こらない。
(ん?)
魔法という言葉にどうも聞き覚えがあるような気がして、記憶を辿ろうとした時だった。
ドアベルが鳴った。
「来たか」
ドキッと心臓が音を立てる。
真白はさっきいたソファに下ろされ、怜音は玄関に向かう。
自分のテリトリーに他人が入ることを良しとしない彼の部屋に入ることができたのは真白と仕事関係の人間だけだった。
それを崩したのがあのゴシップ記事の内容。
怜音はホテルにお持ち帰りすることはあっても、自分の部屋にお持ち帰りすることはなかった。
お持ち帰りされたのは今回の熱愛報道の美女だけだ。
(まさか、例の……。)
ガクガクと体が勝手に震え始め、心臓がドクドクと早く脈打つ。
心の準備ができないままに怜音が戻ってくる。
せめて見聞きしないように目と耳を塞いだ。
「レオさー、今何時かわかってる?」
「ニ時」
「深夜のな。はぁ、ちょうど寝るところだったのに勘弁してほしいよ」
(あれ、この声は……。)
明らかに女よりも低い声に聞き覚えがあった。
「この子が預かったっていう白猫ちゃん?可哀想に、蹲っちゃって。お前なんか怯えるようなことでもしたのか?」
「何もしてない」
「本当かよ」
体温高めの手が優しく頭に触れ、首、背中と流れるように撫でられた。
ビクッと体が反射的に震えたが、二度、三度撫でられると心地良さにホッとしてしまう。
そろりと目を開けると慈愛に満ちたサファイアのように深い青の目が真白を見ていた。
瞬間、それが誰だか確信した。
(銀ちゃん!)