ライオン王子に飼われたネコさん。
(もしかして、お酒を飲む手が止まらなかったのも?)

「私の魔法よ」


しかし、真白はそこで矛盾に気づく。

(契約書なしで魔法かけれてるじゃないですか!)

紅羽の前で不可抗力ではあったが泥酔したのは今回が初めてだ。他はきちんと意識を保って帰っている。

だから、胸を張って今回以外で契約書を交わした覚えはないと言い切れる。

「言ったでしょ?"他人のために"使うことと"自分のために"使うことでは全く意味が違うのよ。私は契約を取り付けるため、"自分のために"酔わそうとしたの。だけど、契約書の内容は全て"真白ちゃんのため"」

(そんな……。)

真白に残された道はただ一つ。
怜音にキスをしてこの契約を終わらせることだけだ。

「落ち込まないで。契約内容は書き換えられないし、私からは破棄もできないけど書いていないことなら手助けできるから。そうね、例えばさっきの真白の願いを叶えましょうか」

トン、とまた額に人差し指が触れた瞬間、ポンっと魔法らしい煙とキラキラした光に包まれて、真白は人間の姿に戻っていた。

さっきまでハイテーブルに見えていたものがちゃんとローテーブルに見える。自分の手を見つめ、指を動かせることに感動した時だった。

自分が生まれたままの姿であることに気付いた。

「○〒%$!?」

言葉にならない悲鳴をあげ、慌てて大事な場所を腕で隠した。

猫の時には体毛に覆われていたが、薄々「今って裸の状態だったりしない?」なんて恥辱を感じていた。

それがまさか本当に裸だったとは。

(この姿であの二人の前にいたってこと!?)

怜音の前で裸でいたということも嫌だが、何よりも銀の前で裸だったことが一番ありえない。

「ちょっ、ちょっと服とってきます!!」

この状態で話を続けるのは無理だ。

客室に走り込み、クローゼットを開けるが中身は空。
一ヶ月前、全て持って帰ってしまった。

(あーーー!!一着くらい置いておけばよかった!)

真白の服はここにはない。
あるのは……。

苦渋の決断の末、怜音の衣装部屋から黒のTシャツを拝借した。
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