ライオン王子に飼われたネコさん。

急いで紅羽に電話をかける。

今は休憩時間でも何でもないので真白なら困るところだが、そんなことは考えていられない。

プルルと長引くコール音に焦れてウロウロしていると、「はい」と自分の声が聞こえた。

「紅羽さん、十分です。もう未練なんてない。吹っ切れましたから。だから、早く終わりにしたいです」

「どうしたの?」

切羽詰まったような、切実な真白の声に流石の紅羽もいつもの調子で流さずに聞き返してくれた。その先からはカタカタとキーボードをタッチする音が聞こえてくる。

高級マンションで、やたらと広い部屋。自分では買えないお高いシャンプーを使って、最先端の機器で餌を与えられて、国宝級イケメンの隣でふっかふかのベッドで寝る。

猫として過ごす以前に五年経っても慣れないラグジュアリーな生活は真白のものではない。

真白の生活とは、仕事中はカタカタとパソコンを鳴らし、ごく一般的なOLが住むマンションの狭い部屋に帰ってちょっと硬いベッドに疲れて寝る、そんなもの。

至れり尽くせりであらゆる感覚が狂いそうな今の生活ではないのだ。

「どうもしてませんが、改めてこれ以上無駄な時間を過ごせないと思っただけです」

もうすぐクリスマス。

日々耳にするクリスマスソングは気持ちを焦らせる。

流石にこの短期間では無理だろうが、この時期はクリスマスに向けて短期間でもいいから相手が欲しいという人はわんさかいる。

もしかしたらその中には将来を真剣に考えてくれる人だっているかもしれない。来年のクリスマスを一緒に過ごすような人と繋がるかもしれない。

かなり望み薄ではあるけれど、それでも怜音に時間を割くくらいなら他に時間を割いた方がよっぽど有意義だ。



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