ライオン王子に飼われたネコさん。

「真白ちゃん、今すっごく怒ってるでしょ?」

「怒ってないです」

「ううん。絶対に怒ってる」

同じ声なのに、正反対に落ち着いた声にイライラとしている自分が浮き彫りになり、少しずつ冷静さを取り戻す。

「すみません。婚約指輪らしきものを見つけて動揺してました」

「誰のものかは見たの?」

「そんなの見れないですよ」

指輪に触れて、内側を見るなんて真白にはできない。

「あれに触れていいのは怜音とその相手だけです」

「真白ちゃんはそれが自分宛だと思わないの?」

「思いませんよ」

五年経ってもそんな話は一度も出なかった。
どこぞの金髪美女は訪れたことがあるという実家にも行ったことがない。

いつからそんな深い関係を築いていたのだろうか。それさえ分からない。

(怜音はどうするつもりだったんだろう。)

流石の怜音でも昨今の芸能事情からずっと二股を続けるつもりだったわけではあるまい。だったら彼はどのタイミングで別れを切り出すつもりだったのか。

別れた今ではどうでもいい話の筈なのに、彼に対して分からないことばかりで馬鹿みたいに揺れてはどん底に落とされる。

これでは付き合っていた時と変わらない。

勝手に涙が溢れてきて、この五年の虚しさを痛感させられる。

「……ごめんね。真白ちゃんを苦しめようとしているわけじゃないんだけど、今ちょっとだけややこしいことになっているのは本当なの。だから迎えに行くのが遅くなっちゃう」

嗚咽を堪え、向こう側には聞こえないようにしていたのに紅羽には分かってしまったようだった。
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