ライオン王子に飼われたネコさん。

「本当はね。真白ちゃんの言う通り、怜音ともう一度上手くいってくれないかなって思ってたんだけどね」

周りに聞こえないようにするためか声を潜めた紅羽に苦笑いするしかない。

「真白ちゃんの中で答えが決まってるなら延長はなしね」

延長はなし、と言う言葉に不安を覚えた。

「いつ迎えにきてくれるんですか?」

「ん〜。二週間以内にはいけると思うけどぉ」

「それ契約期間通りじゃないですか!短縮して下さいー!!」

もうこれ以上は側にいられないと言う切実な思いを伝えたはずなのにちっとも伝わっていないのではないかと思い、また一から説明しようとすると「あ、そろそろ仕事に戻らなきゃ!」といつもの如くかわされてしまった。

だけどそのいつも通りのやりとりに、さっきまで感じていた苛立ちや悲しみは不思議と少しばかり緩和されていた。

なんだか紅羽の手で上手く転がされている感じが否めない。


指輪を見れば今度こそ吹っ切れると思っていたのに、実際はショックなだけだった。

悔しくて苦しくて、これ以上こんなとこにいたくないからと紅羽に電話をかけていた。

それが彼女にはお見通しだったのではないかとさえ思う。

「なんだかんだ、あの人魔女なんだもんね」


小さい頃に憧れた魔女のように何でも魔法で解決できるわけではなく、思っていたよりも融通が効かず、契約なんてものに翻弄されている現状ではあるけれど。

彼女の人の心を読む力だけはずっと変わらない。

少女漫画や恋愛ドラマ好きな魔女のせいでおかしな現状になっているのになんだかんだ彼女は憎めない。

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