ライオン王子に飼われたネコさん。
(だがしかし!)

「マシロ?」

トイレを覗くもそこにはいない。カーテンの裏も学習済み故にそんなところには隠れたりしない。

「あいつどこ行った?」

はぁ、と深いため息をつきつつ、何故か探すのをやめない怜音の足音に少しだけびくつきながら息を潜めて彼が諦めるのを待ち続ける。

これまでは甘んじて!仕方なく!捕まってやったマシロだったが今夜からはそうはいかない。

(あんたは憎い!)

腹が立つとか悲しいとかを一周超えて最早憎い。

怜音の思い通りにはさせまいという堅い意志をもってテレビ台の後ろという掃除が行き渡っていない埃っぽい中で息を潜めている。

見つからないことに苛立っているのかチッと盛大に舌打ちしている。

真白の苛立ちはそんなものではなかったけれど、思い通りにいかない様子にほくそ笑んでしまう。

「仕方ない。先に荷物詰めねーとな」

(荷物?)

ゴロゴロとキャスターが床を滑る音とバサバサと衣類を放り込む音が聞こえてくる。

(また海外?)

これまでも海外でのショーや撮影が立て続けにあり、一回行けば二、三ヶ月くらい帰ってこないことが多かった。

それは仕事ばかりというわけではなくて海外で過ごす休みも含めての話だ。

仕事が膨大だと海外と日本を行き来するのに時間がかかってしまうので、それならいっそ長期間海外にいた方が怜音的にも楽だからだ。

だが、最近は海外に行っては戻ってきて、また海外に行ってを繰り返しているような気がする。
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